「二百十日」
2024.08.30
台風10号の接近にともない各地で大きな被害が発生しているようです。気象庁では今後も暴風や大雨に十分警戒するよう呼びかけていますね。★暦の上では間もなく「二百十日」。これは立春から数えて210日目という意味で、今年は8月31日となります。二百十日は古くから季節の変わり目となる時期で、台風などが発生して天候が荒れやすくなる頃とされ、農家などでは稲の出穂期に当たることから「厄日」とする地域もあるようです。無事に秋の収穫期を迎えてほしいものですね。★お盆を過ぎてから僅かな時間でしたが、私たちも暫しの休息をいただきました。心身共に新たな気持ちで今年の後半に臨みたいと思います。休息中には普段は慌ただしくてできない漆箔作業や彫刻の検証、あるいは筆文字の調整などを行いました。今でも以前に師匠から教わった通りの検証方法を繰り返しています。文字を彫刻する場合は自分の意思というより、指先が勝手に動いて彫刻できるようになるまで繰り返し練習して体に染み込ませるよう教えられたのを思い出します。もちろん道のりは遙か遠く、どこまでも練習の積み重ねということになりそうです。★台風は今夜にも島根県に最接近する予報になりました。今後も最新の情報を確認しながら備えなければなりませんね。
「処暑」
2024.08.20
8月16日には松江大橋周辺で「灯籠流し」が行われました。静かに川面を流れる灯籠はとても幻想的で、この時期の風物詩になっていますね。灯籠流しで精霊を送ると間もなく「処暑」を迎えます。処暑(しょしょ)は二十四節気のひとつで「厳しい暑さが収まる頃」とされています。とはいえ日中の気温はかなり上昇しているのでもう暫くは暑さ対策が必要になりそうです。★電気の無かった時代の人々は扇風機もエアコンも無い生活の中で暑い夏をどのように過ごしたのでしょうか? 便利になった現在の生活からは想像することさえ難しいですね。古い書物などには江戸時代の人々は日常の暮らしの中で涼しさを求めるために様々な工夫をしていたと書かれています。日中は簾(すだれ)や葦簀(よしず)などを活用して風通しの良い空間で過ごすのが基本だったようで、家の玄関先や道に水をまく「打ち水」も盛んに行われたそうです。また、井戸水で冷やした「西瓜」や、商人が売り歩く「冷や水」も人気があったとか。意外ですが、「甘酒」なども栄養補給と夏バテ防止の効果もあることから好んで飲まれていたそうです。日々の暮らしの中では「金魚」や「風鈴」なども涼しさを演出する小さな工夫だったのかもしれませんね。★まだまだ残暑は厳しいですが、先人達の工夫に倣って暑い夏を乗り切りたいものです。
「お盆」
2024.08.12
いよいよ明日からはお盆。朝晩は少しだけ過ごしやすくなっていますが、まだまだ暑い夏が続きそうですね。★そもそも「お盆」の由来は何でしょうか?「お盆」は仏教における「盂蘭盆(うらぼん)」に基づくとされています。語源はサンスクリット語の「ウランバーナ(逆さに吊り下げられた苦しみ)」とされ、盂蘭盆経に書かれた目連尊者の説話が広く知られています。その昔、お釈迦樣の弟子の目連尊者の母親は子である目連尊者を溺愛し、周囲の不幸に無関心であったことが原因で餓鬼道に落ちてしまいます。餓鬼道に落ちた母は逆さに吊され、食べることも飲むことも出来ずに苦しむことになりました。神通力を持つ目連尊者は母のその姿を目にし、嘆き悲しんでお釈迦樣に相談します。するとお釈迦樣は、自分の力を母親のためだけでなく、母親と同様に飢え苦しむ人々のために使うよう諭しました。これに従った目連尊者の功徳により母親は極楽往生を遂げたとされます。盂蘭盆の概念については諸説あり定かではないようですが、古来より日本にあった祖霊を祀る文化と融合して現在のようなお盆の行事になったと考えるとなるほどという気がします。お盆はご先祖や故人とつながる時期。心静かに過ごしたいものですね。★明日からの3日間はお盆休みとさせていただきます。お盆前の期間にはご愛顧を賜りましたことスタッフ一同、心よりお礼申しあげます。
「盆提灯の組立て⑤」
2024.08.03
今日の松江の最高気温は35度を超えていたのではないでしょうか。外出する際には注意が必要になる暑さでしたね。★提灯の組み立てのご紹介は最終段階となります。台座に「火袋」をかぶせて3カ所の「火袋止め」を回して止めたら「電球」を取り付けます。さらに「上柱」の上端に「雲手」を取り付け、火袋をゆっくり持ち上げて「金具」に火袋の紐を掛けると完成です。今回は一般的な大内提灯の組み立て方法をご紹介しましたが、それぞれ提灯ごとに組み立て方が異なる部分もありますので付属の「組立説明書」を参考にします。また、盆明けに提灯を収納する際には虫食い予防のため提灯用の「防虫香」などを入れておかれることをおすすめしています。★火種の油が貴重であった時代から「灯り」は大切なお供えとして定着していたようです。また仏教において「灯明」は闇(無明)を照らす智慧の灯りとされてきました。お盆に用いる提灯もご先祖をお迎えする際の灯明で、すでに鎌倉時代には京都で精霊迎えとして「高灯籠」が用いられていたという記録が残されています(明月記)。現在ではお盆の形態は地域や宗派ごとに特色がありますが、ご先祖や故人を想う気持ちは連綿と受け継がれているような気がしますね。