header

blog

「鼕まつり」

2024.10.10

暦の上では「寒露」を迎え、朝晩には肌寒い風も吹くようになりました。いよいよ本格的な秋の到来ですね。★今年も残すところあと2ヶ月半余りとなり、各地で収穫祭や感謝祭などの秋祭りが行われる時期を迎えました。松江でも10月20日(日)には恒例の「松江祭鼕行列」が盛大に開催され、普段は静かな町が一際賑やかになります。「鼕」と呼ばれる大きな太鼓を打ち鳴らしながら松江城から白潟天満宮まで練り歩くこの祭りでは、地元の方々はもちろん観光で訪れた方々などで沿道は埋め尽くされ、際立って華やかな一日となります。今年の鼕行列は16台の鼕台が参加する予定となっており、それぞれの町内のもつ伝統的な鼕の響きや笛の音が聞けるのではないでしょうか。★10月5日の夜にはプレイベントとなる「鼕まつり」が開催され、私たちの町内も参加させていただきました。1年ぶりに鼕の共演を間近で堪能できる機会でもあり、多くの方がお出掛けでした。いくつもの町内の鼕の音が融合して生まれる松江鼕独特の風情には飽きることのない魅力がありますね。19日(土)には宵宮と呼ばれる前夜祭、20日には祭りの本番を迎えます。ご都合のつく方はお出掛けになってはいかがでしょうか。今週も夕方過ぎになると町のあちらこちらから笛や太鼓の練習の音が聞こえています。20日の当日に向けて一気にムードは盛り上がりそうですね。

「上達の四段階」

2024.09.30

お彼岸の中日を過ぎてからはすっかり秋めいた気候に変わりました。日中は汗ばむような陽気でも夕刻からはもう秋の気配ですね。★私たちの工房でも気候が良くなりましたので、順調に仕事を進めています。画像は金箔の剥がれたお位牌を補修しているところのものです。金箔を施した仏具や仏像の表面は特にデリケートで、取り扱いには注意が必要になります。万一、金箔が剥がれた場合は比較的短期間で修復が可能ですので専門店にご相談ください。★随分以前のことですが、私の修業時代には金箔の基本も知らない段階から教わったので、師匠には随分と面倒を掛けたのではないかと今更ながら反省しております。私が教わった金箔技術は習得までに4段階ありました。第1段階はとにかく繰り返し試すこと。上手く行くことなど殆どありませんがとことん練習を積み重ねます。第2段階は上手く行かないところを改善する段階となります。師匠の指導を受けながら、何故上手く行かないのか考え、あらゆる方法を試して基礎を確立します。第3段階は先人達の指導書などを確認しながら高いレベルの技術に挑戦します。最初から難しい指導書を見ても意味が分かりませんが、基本的な技術が習得できれば理解できるようになります。第4段階は見えないものを見る力を養います。江戸時代に造られた仏像などの修復には先人達の気持ちをくみ取る想像力も必要になります。★随分と時は流れましたが、仕事をする度に修業時代の場面を鮮明に思い出すのは不思議なものですね。

「収穫期」

2024.09.20

9月上旬に感じた秋の気配は遠のき、厳しい猛暑のまま秋のお彼岸を迎えました。今日も松江では35度を超える予報になっていますね。★実りの秋を迎えて近郊の水田では稲刈りの真っ最中です。先日、仕事で通りかかった農道沿いの稲穂も十分に実っていました。今年は大雨や台風などの心配もあり、農家の方々のご苦労は大変なものだったのではないでしょうか。先頃発表された令和6年度の作柄は全国的に「平年並み」という地域が多く何よりでした。★農水省の統計では基幹農業従事者は人口の約1.0%になるそうですが、昔の農業人口はどれくらいだったのでしょうか? テレビの時代劇などでは武士や町人が中心的に登場するので想像できませんね。実は、江戸時代の記録には国民の約8割が農業に従事していたとあります。大雑把ですが、武士や神官、僧侶などが約1割、町人その他が約1割ほどであったとか。また、商工業としては大工、鍛冶屋、桶屋、染物屋、畳屋などの製造業、穀屋、酒商、油売り、荒物屋、飴屋、魚商、塩商、たばこ屋、肴屋、茶屋などの商業が主なものであったと書かれています。それらすべてを合わせても比較にならないほど農業人口は多かったことになりますね。★秋のお彼岸は収穫期と重なるので作柄などが気になりますが、今年は特にお米に関わるニュースが多くなりました。農家の方々の努力やご苦労が報われることを願うばかりですね。

「重陽」

2024.09.10

日中の気温は上昇して連日、厳しい残暑となっています。それでも朝夕に吹く風の涼しさに秋の気配を感じるようになりましたね。★お盆が明けると私たちも秋のお彼岸までに納入する業務で慌ただしくなります。画像は洗浄・クリーニングでお預かりした唐木仏壇の分解途中のものです。これは昭和の終盤に造られたお仏壇で、木地は大変安定しており組立ても丁寧な技法となっていました。お線香などの油煙による汚れは見られるものの大切にされてきた様子がうかがえます。このあと全体の洗浄、木地表面の調整、塗装、障子張り替え、背金張替、組立てという手順で進めることになります。丁寧に仕上げてお彼岸までにはお返ししたいと思います。(画像はご依頼者様にご了解をいただき掲載しています)★今週は「菊の節句」と呼ばれる「重陽(ちょうよう)」を迎えました。現在は稲刈りの時期と重なるので秋の入り口というイメージになっていますね。もともと陰陽思想では奇数は「陽」とされ、縁起のいい数と考えられてきました。その中で最も大きい「九」が重なる9月9日は「重陽」と呼ばれ、特にめでたい日とされたようです。日本では旧暦の9月は菊の花が咲く時期であることから「菊の節句」と呼ばれるようになったと言われます。「桃の節句」や「端午の節句」などに比べると馴染みは薄くなっていますが、現在でも各地で風情のある様々な「重陽」の行事が行われているようですね。