「新嘗祭」
2023.11.20
山陰でも先週の後半から不安定な天候となり、週末には松江でも初雪が観測されました。11月上旬の夏日からわずか10日ほどで初雪が見られたのは意外でしたが、昨日は久し振りに気温も上昇して穏やかな一日になったようです。★鹿島町にある佐太神社では毎年11月20日から25日に「神在祭」が執り行われます。地元では「お忌(いみ)さん祭り」として親しまれていますね。神在祭では20日に「神迎神事」、23日に「新嘗祭」、25日に「神等去出神事」が斎行されます。23日の「新嘗祭(にいなめさい)」はその年の収穫に感謝して新穀を神前にお供えし、来年の豊穣を願う行事とされています。これは日本書紀にも登場する古くからの宮中祭祀で、現在は全国の神社でも執り行われます。この日は「勤労感謝の日」として広く知られていますが、戦前は「新嘗祭」と呼ばれる祝日だったそうです。大自然の恵みや生きることそのものに対する「感謝の日」と言えそうですね。★聖観音菩薩像の修理は下地と木地の補修が終わって、中塗りの最終段階になっています。画像は各部位を仮組みしたもので、まだ結合はしていません。心配していた右手と蓮華、両足の製作は順調に進み、ようやく完成時の様子がイメージ出来るようになりました。このあと丁寧に水研ぎを施し滑らかにしてから、仕上げ塗り、金箔押し、加飾となります。★今週の前半は日中の気温も持ち直して穏やかな天候になりそうな予報が出ていますね。
「仏壇クリーニング洗浄」
2023.11.10
11月に入ってからも気温は下がらず、かつて鼕行列が行われていた11月3日は松江でも25度を越える夏日となっていました。過去の鼕行列はみぞれの降る中で行われたこともあるそうなので、随分と暖かい秋となっているようです。古代中国で考案された「二十四節気」では四季の始まりは立春、立夏、立秋、立冬の四つで、暦の上では11月8日の「立冬」から冬となります。立冬は「秋が極まり冬の気配が立ち始める日」とされていますが、本当の冬はもうしばらく先になりそうですね。★今年も残すところ2ヶ月を切り、私たちの工房でも年末までに納入するお仏壇や仏具の修繕などの業務で慌ただしくなりました。画像はご自宅の建て替えの機会に合せ、お仏壇のクリーニング洗浄のご依頼でお預かりした「唐木仏壇」です。クリーニング洗浄の手順としては分解、洗浄(すす洗い)、木地補修、塗装、金具補修、背板・障子の張り替え、組立てとなります。今回は塗膜に傷みが見られるので、研ぎと塗装が中心になりそうです。納期は「塗り仏壇」よりもやや短く、1ヶ月程度で完成となります。様々な業務の同時進行となっていますが、順調に行けば予定通り年内には納入できると考えています。(画像はご依頼者様にご了解を頂き掲載しています)★今日の松江は小雨の降る朝を迎えています。週末を通して雲の多い天候になりそうですね。
「聖観音菩薩像修復②」
2023.10.30
暦の上では「霜降」を迎えて朝晩の気温は一段と低くなりました。二十四節気では秋の最後の節季になるので晩秋ということになります。この時期からは山々の木々が本格的に色づいて紅葉の見頃となりますね。古くからこの時期は一日の温度差が大きく徐々に気温も低くなることから、健康維持のためにも栄養価の高い食べ物をしっかり摂って寒い冬に備える頃とされます。「霜降」の次は「立冬」。いよいよ暖房器具の準備を始める時期になりますね。★観音菩薩像の修理は分解工程から木地の補修工程に入っています。部材ごとに膠(にかわ)で固定されているので、各部材をぬるま湯で溶かして分解します。熱湯で溶かす方法もありますが、早い技法である反面どうしても木地を傷めてしまいますので時間を掛けて分解します。このあと、水分を含ませながら丁寧に下研ぎを行ってから、木地調整、下地調整となります。この聖観音菩薩像はこれまでに修復された形跡はなく、宝冠の金具類と右手、左手の持物と思われる蓮華が欠損しているほかは、木地の状態を含めて極めて良好な状態でした。100年の歳月を遙かに超える時間を過ごしてきたことを考えると驚くばかりです。欠損部位は丁寧に造り直して後補したいと思います。★先週の後半は雷を伴った不安定な空模様でしたが、今週は秋晴れの見られる穏やかな天候になる予報になりました。
「灘町と共に」
2023.10.20
長い歴史をもつ松江の秋の伝統行事「松江祭鼕行列」が15日に盛大に開催され、14町内と2団体は揃いの法被に身を包み、勇壮な鼕の音を響かせながら松江城大手前から白潟天満宮前まで練り歩きました。画像は天満宮前で熱演に見入る市民の皆さんと石橋二丁目の鼕台。★7月には鼕行列の安全祈願祭が松江神社で執り行われ、同時に鼕の出発順を決めるくじ引きが行われました。今年の1番くじを引いたのは灘町。灘町の石川実行委員長は「先頭で叩けるのは名誉なこと。感謝の気持ちを込めて打ちたい」と語っておられました。しかし、残念なことに鼕行列前日の練習で鼕台の車軸が破損したとのこと。修理が間に合わず、やむを得ず参加を断念されました。どれほど無念な思いであったでしょうか。★鼕行列当日の式典では1番鼕の灘町の代表挨拶で「今年、灘町は鼕台を出すことはできませんが、心はひとつ。皆さんと一緒に参加させて下さい」と語っておられたのが印象的でした。直前まで準備をされた方々の悔しさは容易に想像できます。今年は「歳徳神」の下に2番札を掲げた幸町鼕台が先頭となる鼕行列でしたが、多くの参加者の心は「灘町」と共にあったのではないでしょうか。そして鼕行列は松江がひとつになる大切な祭りであると改めて感じた一日となりました。喜びも悔しさも織り交ぜて、また鼕行列の歴史の1ページが加わったような気がします。