「年の瀬」
2023.12.30
慌ただしいままに12月も過ぎて、令和5年も残すところあと2日となりました。納品予定の仕事はすべて無事に終わり、私たちも今日は店内と工房の清掃を済ませてから年越しの準備となります。★今年も様々な出来事がありましたが、あっという間の一年であったという印象です。日常生活ではコロナの問題も落ち着いて、徐々にではありますが日々の暮らしも元に戻りつつあるように感じました。一方、世界に目を向けると、昨年2月から始まったロシアのウクライナ侵攻の問題は混迷の度を増し、今年も収束することはありませんでした。さらに今年はイスラエルとパレスチナの紛争が勃発することになり、当たり前だと思っていた穏やかな暮らしがある日突然に奪われることがあるということを実感した一年でもありました。一日も早く誰もが安心して暮らせ日が訪れることを願うばかりです。★一方、国内ではWBC(ワールドベースボールクラシック)で「侍ジャパン」が優勝するなど嬉しいニュースもありました。また、将棋の藤井聡太竜王の史上初の八冠達成などは将棋ファンならずとも大いに注目した話題だったのではないでしょうか。★いよいよ年の瀬となりましたが、この一年ご愛顧を賜りましたこと心よりお礼申し上げます。本当にありがとうございました。来る年が皆様にとって夢や希望に満ちた平和な一年になりますよう心よりお祈り申し上げます。(画像は京都南禅寺の庭園)
「冬至」
2023.12.20
先週末からはすっかり気温も下がって冬型の天候になっています。堀川遊覧船を楽しむ皆さんも船に積まれたコタツを囲むように乗船しておられました。★今週は一年で最も日照時間が短くなる「冬至」を迎えます。冬至は厳寒の冬に向かう時期でもあり、古くから健康に配慮して栄養価の高い食事を摂る習慣があったそうです。また、冬至を過ぎると少しずつ日照時間も伸びることになり、「一陽来復(いちようらいふく)」と言って徐々に運気が上昇し始める頃とされてきました。★暦の上での「冬至」という概念はいつ頃からあったのでしょうか?世界の暦の始まりは紀元前3500年前後に栄えたメソポタミア文明の頃と考えられています。暦では一年で最も太陽の力が落ちる「冬至」の時期が一年の始まりとされ、古くは冬至の前後に新年の祭りが盛大に行われていたようです。また、古代ローマでも農耕の神を祀り、邪鬼を払う「冬至祭」が行われ、人々は仮装して会食を催し、プレゼントを交換するなどの文化があったそうです。12月25日はイエス・キリストの降誕を祝う日として定着していますが、クリスマスは古代ヨーロッパの「冬至祭」の風習と「キリスト教」が結びついて現在のような形になったと伝えられています。日照時間が最も短くなる時期を節目と考えて、世界で様々な祭りが催されてきたことは興味深く感じますね。★12月25日(月)は店内電気工事のため臨時休業となります。ご不便をお掛けしますがよろしくお願いいたします。
「聖観音菩薩像修復④」
2023.12.10
今日の松江は雲の多い朝を迎えました。気温は穏やかで寒さも感じない一日になりそうですね。★聖観音菩薩像の修復は無事に終わりました。造られた当初はこのような状態であったのではないでしょうか。一般に、古い仏像はそれぞれ異なっており、損傷の程度も一様でないことから、特定の仏像修復のための解説書などはありません。師匠から教わった修復技法やこれまでの経験を基に、可能な限り最良の手法で修復することになります。多くの場合、修復途中で様々な困難に遭遇することになり、想定通りに進むことは殆どありません。今回もいくつかの場面で悩むことになりました。宝冠部分の剥離した胡粉の処理が思うように行かず、これは何度もやり直しをしています。また、欠損した右手の製作についても左右の腕が蓮弁を開こうとする位置にないことから、多くの資料を検証することになりました。完成がやや遅れてしまいましたが、無事に納入することができて安堵しております。★師匠から教わった修復技法に関わる記録を紐解いてみると「仏像はあくまでも信仰の対象であり、その技法はそれに相応しいものであるか」「その技法は百年後まで残ることを前提としているか」「将来、再度修復された場合、職人が基本技法を用いて再修復できるよう考慮しているか」とあります。今では尋ねることも叶いませんが、困難な場面に遭遇する度にここに立ち戻るようにしています。★週明けから雲の多い天候になりそうな予報になっています。週の半ばにかけては雨の降る日もありそうですね。
「聖観音菩薩像修復③」
2023.11.30
今週に入ってからは時折、冷たい風も吹くようになっています。いよいよ冬の入り口に差し掛かっているようですね。★今年も残すところあと1ヶ月となり、早いもので明日からは師走を迎えます。師走という言葉は古くからあったとされ、すでに奈良時代や平安時代の文献には記載があったとあります。もともとは「とし(年)」が「はす(果てる)」などという意味で使われた言葉であったようですが、現在のように先生(僧侶)でさえ走り回る忙しい月という意味で使われるようになったのは江戸時代以降という説が有力だそうです。何かと慌ただしい昨今では「師」はもちろん、すべての人々にとって忙しい時期となります。風邪など引かぬよう、無事に師走を乗り切りたいものですね。★観音菩薩像の修復は加飾工程に入りました。画像は各部位に金箔を押して仮組みをした段階で撮影したものです。金箔は極めて薄いものなので、仕上がりを左右するのはその前の塗り工程の出来次第となります。すべての工程も同様で、一連の作業はすべて繋がっており見えない部分も手を抜くことはできません。師匠からは「途中で手を抜くと先で分かってしまうんだよね」と何度も教えられたことを今でも思い出します。このあと、眼入れ、宝冠金具、厨子の組立てとなり完成です。★松江は今日も雲の多い朝を迎えました。日中の気温もそれほど上がらない予報になっていますね。