「紫陽花」
2024.06.30
週の後半も梅雨らしい天候が続きました。本格的な夏の到来はもう暫く先のようですね。★この時期になると近くの天台宗寺院「普門院」の境内には紫陽花の花が咲き誇ります。素通りしようと思ったのですが、鮮やかな色合いに思わず見入ってしまいました。 「紫陽花や帷子時の薄浅黄(松尾芭蕉)」 帷子(かたびら)とは裏地を付けない夏用の衣という意味。薄浅黄は浅葱色に近い色で、江戸時代の元禄期から正徳期に流行したそうです。芭蕉の生きた時代の人々も紫陽花のような薄浅黄色の涼しげな衣を身に着けて移りゆく季節を感じたのでしょうか。★松尾芭蕉は江戸時代の俳人ですが、平安時代から鎌倉時代初期にかけて活躍した「西行法師」に強く影響を受けたとされています。西行法師は出家したのち高野山に入り、全国を行脚して多くの歌を詠んだことでも知られています。芭蕉の「奥の細道」の旅の目的も東北各地で俳句を詠むことと同時に、西行法師など先人が歌に詠んだ歌枕の地を探訪するという意味もあったとされます。そして道中では奥州平泉や出羽国立石寺などを巡り数多くの句を詠んでいます。やがて芭蕉が旅した東北・北陸の地は多くの俳人や歌人たちの聖地となり、芭蕉を慕いその跡を辿るようになったとされています。★梅雨空の下で紫陽花を眺めながら、いにしえの人々が生きた時代に思いを馳せると時間が経つのも忘れてしまいますね。